ルーツが物語るように、織物の中でも別格の扱いをされてきた御召。コシと張り、特有のシャリ感が上品な風情を醸し出します。裾さばき小気味よく、立ち姿もどこかすっきりしている御召のきもの。大正から昭和の時代には京都はもちろん、東京山手の奥様やお嬢さんのお出かけ着として活躍しました。
かつては、パーティーには縫取御召、観劇やおよばれには風通御召、お茶会には上代御召、お稽古着には絣御召などと、織り方や柄、糸質によって多くの種類がある御召を着分けていたものです。ここ最近、ふたたび脚光をあびている御召を、280年も前より手がけてきた矢代仁が、その製品と種類を御説明いたします。

無地御召 | 縞御召 | 絣御召 | 紋御召 | 絵貫御召 | 縫取御召 | 風通御召

単色で文様をつけずに織り上げた御召です。きものを着慣れた方は、「色無地に始まり色無地に終わる」ともいわれるように、色無地は、帯や小物との合せ方に個性やセンスを発揮できる着物です。とりわけ織物は、タテ糸とヨコ糸が織りなす奥行きのある色調と品格が、染物とはまた違った妙なる情趣を感じさせます。紋付にすると、略礼装としても着ていただけます。

御召の始まりともいわれる「縞御召」は、数ある縞の着物の中でも、最も格調高い御召です。二色以上の色糸を縞に整経して、左右の強い撚り(より)をかけたヨコ糸で織り上げたものです。さりげない彩りにも伝統が感じられ、その素朴な趣きの中に粋な個性がうかがえるお召しものです。お稽古着や外出着として、染めや織りの名古屋帯を合わせて、きりりと粋な格好を楽しみましょう。



「絣」はタテ糸・ヨコ糸を部分的に手でくくり、防染して絣柄を織り上げたもの。西陣御召として代表的な「矢絣」柄はもともと、矢羽をモチーフにしているもので、大正ロマンを彷彿とさせるノスタルジックな印象と、逆に新鮮さを兼ねそなえた御召です。卒業式の袴に合わせるきものとしても、定番になっています。ちなみに「矢絣御召」は嫁ぎ先から戻ることのないようにと昔から縁起ものとして、必ずお嫁入りの荷物に入れられたとも。昔は、紫×白が基本でしたが、現在は多色使いなどバリエーションも豊富です。気軽な集まりやお稽古着に、季節の染め帯をお好みで合わせてみてください。

ジャガードなどの紋織機で、文様のパターンを反映させた紋紙を用い、織り上げたものを紋織といいます。
(注)ジャガードは1804年、フランス人ジョセフ・マリー・ジャガールによって発明され、彼の名を由来にジャガードと呼ばれています。当時の紋織装置は空引機で、紋引き工が織機の上に乗って、タテ糸を引き上げ、下では職工が機台を操作しこの二人が呼吸を合わせておられていました。ジャガードは職工1人で操作できる画期的なもので、明治8年に我が国に輸入されて以降京都西陣を中心として急速に普及しました。

ヨコ糸の浮き沈みで、文様をあらわした落ちついた単色のお召しものです。

(注)文様をあらわすヨコ糸のうち、耳から耳まで、すなわち織物の全幅に用いるヨコ糸を絵貫(エヌキ:絵緯)といいます。

文様の部分を、金糸や銀糸、色糸などで刺繍のように織り上げたものです。絵画のように多彩で複雑な文様が表現され、絹が奏でる至宝といえましょう。絵羽模様 (縫い目にまたがる大柄の模様)の御召は、縫紋や重ね 衿を付け、お正月などのハレの席に、またフォーマルなきものにもなります。

(注)文様をあらわすヨコ糸のうち、文様を織り出すのに必要な部分、すなわち両耳にかからないヨコ糸を縫取といいます。

明治中ごろに、西陣ではこの風通御召が全盛を極めたと言われています。「風通」とは、表と裏に異なった色糸を使い、表と裏の文様が反対の配色になる二重組織で織ったものをいいます。精緻な文様があらわせる上品な感じのお召しものです。


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