矢代仁の新商品を季節ごとにご紹介させていただきます。

 穂高の天蚕糸を使った織物

【穂高天蚕糸 〜きらめく野生、天蚕〜】
天蚕糸紗絵羽「鳳凰文」
天蚕糸紗絵羽「鳳凰文」
天蚕とは、わが国固有の原産で鱗翅目天蚕蛾科に属する大型の野生絹糸虫です。 天然の山野でナラ、クヌギ、カシワ等の葉を食物として棲息しており「やまこ」「やままゆ」とよばれており、美しい「緑色の繭」をつくるところから「青やまこ」ともよばれています。
穂高町有明地方では、天明年間(1781〜1788)の頃から天蚕の卵を採取し飼育がはじめられ、寛永年間(1848〜1853)には繰糸が行なわれ、明治30年(1897)頃に最盛期(年間生産800万粒)をむかえました。しかし、大正4年の焼岳噴火の降灰で多大な痛手を受け、その後太平洋戦争の開戦により生産が途絶えてしまいました。昭和48年、この「幻の糸」を復活させようとの気運が盛り上がり、飼育が再開されました。長野県天蚕試験場、穂高町関係機関の三十余年の努力により、現在、僅かながら年間生産量10万粒を確保しています。
天蚕糸の優美な光沢には、染科に染まりにくい天然絹糸そのものの美しさがあり、また丈夫で軽く柔らかくて保温性に富むなど優れた特性があります。その稀少性から「繊維の女王」「繊維のダイヤモンド」とも呼ばれて珍重されています。
参考:繭、繭糸の性状比較表

家蚕 天蚕
繭重 2.0g 6.0g
繭長 3.5cm 4.8cm
繭幅 1.9cm 2.5cm
繭層歩合 22〜25% 8〜10%
繭糸長 1,300〜1,500m 500〜600m
生糸量 繭1,000粒から380g 繭1,000粒から300〜350g
繊度 2.3〜3.0d 5.5〜6.5d

【天蚕に関する矢代仁の活動が、中日新聞に紹介されました】

天蚕糸織り着物安曇野市に寄付 京都のメーカー
安曇野市穂高で栽培されている天然のカイコがつくる高級生糸「天蚕(てんさん)糸」を織り込んだ着物が二十四日、市に寄付された。京都市の西陣織メーカー「矢代仁」が新開発した天蚕糸をふんだんに使った高級品。同社は一作目を寄付した。穂高では江戸時代から天然カイコの栽培が始まった。全国的にも一級品の天蚕糸が取れる地域として発展を遂げたが、現在は高齢化が進み、飼育農家の生産者は十人にまで減少。後継者の育成が課題になっている。平林伊三郎市長は「天蚕糸は安曇野市の貴重な財産。伝統技術を守り育てていきたい」と話していた。
(文:平成18年3月25日付、中日新聞朝刊より)
天蚕繭(箱の中央緑色)と天蚕糸
天蚕繭(箱の中央緑色)と天蚕糸


   


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