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あやめ・かきつばた
出典:矢代仁蔵書「四季の花」 |
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昔から、「いずれあやめか杜若」などと美人の形容にも用いられている、野に咲く紫色の優美な花。あやめの名はアヤメ科アヤメ属の植物の総称として使われることが多い。あやめと杜若は別の花であるが、アヤメ類は似ていて区別するのは一般的に容易でない。
あやめ(綾目)〜山地のやや乾いた草原に生育する。五月頃に咲く花は花菖蒲や杜若に比べ、やや地味(小輪咲)であり、紫の花弁の付け根が黄色で、そこに紫色の網目模様があるのが特徴である。剣葉は幅狭く、濃緑色、主脈は不明瞭。葉脈が縦に平行に交目(あやめ)模様が入っている。高層湿原で見かけるのは檜扇菖蒲(ひおうぎあやめ)。 |
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杜若(かきつばた)〜水辺、湿地に群生する。開花は初夏の頃だが、四季咲きもある。あやめに似た濃紫の花弁(中輪咲)の中央に白を配す。剣葉は幅広く、中央の葉脈は目立たない。花の姿が、頭上をかすめる燕(つばめ)を思わせるので燕子花(かきつばた)とも言う。日本原産のため古くから日本人に愛され、「万葉集」にもこの花を詠んだ歌が数首ある。白花もある。三河八橋の杜若は名高い。いけばなのいけ方は優しく女性的で、男性的に扱われる花菖蒲とは対照的。
※花菖蒲(はなしょうぶ)〜日本、中国北部、朝鮮半島、シベリア原産の野花菖蒲を原種として、江戸時代、観賞用に品種改良された。日本の古典園芸植物として世界的に有名。アヤメの中でこの種が園芸的に最も発達、二千種類あるといわれる。江戸、肥後、伊勢の三系統に分けられる(近年は外国種も多い)。湿地や水辺を好む。六月頃色彩も様々に鮮麗な花(大輪咲)開く。あやめや杜若と混同されやすいが、葉はやや青みをおびた緑色で幅中くらい、中央に隆起した脈がある。黄菖蒲もある。
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江戸系 |
野花菖蒲に改良を加え、
江戸の堀切で栽培された。 |
色彩が鮮やかで群生美に優れる。 |
肥後系 |
幕末に細川家(熊本)に譲られた
江戸系から改良された。 |
花は厚弁の大輪で品位、
風格が堂々としている。 |
伊勢系 |
幕末に三重県松坂で発達した。
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花弁が縮緬地で深く垂れ、
優しくこじんまりとしている。 |
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※鳶尾(いちはつ)〜。中国原産。昔は藁葺き屋根の棟(むね)に植えると粘土(へなつち)の流失を防ぎ、大風の被害を防ぐとされた。杜若に似た形の白や紫の花が咲く。剣葉はやや短広。定かではないが、このアヤメ属のなかで一番早く花を咲かせるので一初草(いちはつそう)をあてたといわれる。
※菖蒲(しょうぶ)〜香気が邪気を払うとされ、五月の端午の節句に、軒につるしたり、風呂の湯に入れたして用いる。サトイモ科の草で、アヤメとは全く別物。池や溝の周辺に芳香のある緑色の艶々(つやつや)しい剣状の葉を叢生(そうせい:群がってはえる)する。初夏のころ花茎から、黄緑色の細い花が出てくるが、観賞するに足りない。ショウブも白菖と石菖が混同されており、端午の節句に菖蒲湯として用いられるのは白菖。 |