稲〜二百十日の前後には稲の花ざかりで、広い田の面に青い穂を高くぬき、はじめはその走り穂を数えることができる。やがてその穂が黄熟して重そうに下垂し、稲田一面に金色の稲穂の波をたたせるようになる。粳稲(うるしね)・うるち・うるしと糯稲(もちいね)・もちごめ・もちと区別があり、前者はわれわれの常食料であり、後者は餅・強飯(こわいい)をつくる。日本では三千年来栽培し、原産地は東インドから東南アジア地方であるらしい。品種は近年急速に改良されたが、広島県の山間にはかばしこまたは麝香米(じゃこうまい)という香の強い古い品種がある。日本米と南京米とを交配しても雑種ができにくいほど、品種はへだたっている。早稲・中稲・晩稲とその成熟に遅速があり、陸稲(おかぼ)と言って畑にもつくる。九州でははるもの・のごめと言っている。矮生種(わいせいしゅ)をこびといねと言う。しね・いな・田の実・水影草・富草・すめらみぐさ・たみのはぐさなど、異名、雅名が多い。
稗(ひえ)〜畑に植える畑稗、水田にも栽培する田稗、のぎの多い熊稗、のぎのない早生稗などがある。雑草犬稗を栽培化したものという。一メートルあまりの茎を立てて細長い葉をつける。秋に淡緑色または褐紫色の多数の花穂を生じ、のちに実を結ぶが、花穂は下垂せず、円錐花穂をなして直上する。穂軸には白色の剛毛がある。中秋のころ収穫し、食用にしたり、小鳥の飼料にする。近年、耐寒性の強い稲の品種が出現したため、稗の栽培は減少し、わずかに東北地方の一部で行なわれている。近ごろ茎葉を飼料とするため唐人稗が日本でも栽培されている。オイシバから栽培化されたという四国稗は、穂が鳥の足指の形なので、かもまた稗ともいい、山奥の畑に栽培されたが、今ではほとんど消滅した。
枝豆〜まだ十分熟せず、青いのを枝のまま採取したもの。ゆでて食べる。大豆であれば、どんな品でもよいようなものの、種実が大きく、香味のいいものが適当し、ことに早生の品種が喜ばれる。早生種は七月上旬、盆ごろに採取でき、ふつう七月下旬から秋の間である。緑色の莢(さや)がふくらみ、押すと青い豆が小石のように走り出る。莢ごと青々と茹でて名月に供えるので、月見豆とも言われている。
ペチュニア〜衝羽根朝顔というのは、花の形にもとづいて言う。南米の原産で、花園に培養され、茎の高さは60センチほど、時に蔓のようになって繁茂する。卵形の柔らかい葉をつけ、初秋のころ、葉のわきに花梗を出して、漏斗状の花をつける。色は紫・紅・桃・白・淡黄などで、美しい網目のはいるものもある。一種に八重咲きペチュニアがあり、主として鉢植にされる。