辛夷(こぶし)〜山林や庭に生える落葉喬木で、高さは数メートルにおよぶ。四月ごろ緑色の小枝の先に濃いかば色の、毛のある筆の穂形の苞(ほう)が、新葉に先んじてふくらむ。するとほどなく開花して、木槿に似た香気のある六弁の白い大形の花を枝上に開く。葉は倒卵形で、先は尖り、若葉のうちは毛がある。秋になると実がはぜて、赤色の種子が白糸で懸垂する。古名、やまあららぎと言い、こぶしはじかみは、実に辛味があるからの名称である。一種に幣(しで)辛夷、一名姫辛夷がある。細長い花弁が散開したさまを注連(しめ)などの幣に擬した名である。