大根〜日本でもっとも用途の広い野菜である。ふつう、八、九月の候に播種し、生育に応じて間引いてゆき、年内に収穫しおわる。用途によって沢庵大根・干大根・煮大根などに区別し、茎葉までも利用される。尻細のものと尻丸のものとがあり、根身が地上に抽出する種類が多い。宮重大根は愛知県西春日井郡宮重村が本場で、根の半分ほどが抽出して緑色になるので青首大根とも言われ、肉質が緻密で甘く煮ても漬けても干してもよい。神奈川県三浦郡の三浦大根はその形から中膨大根とも言い、一、二月の厳寒期出盛り、風呂吹・おでん・野菜鍋などによい。その他練馬原産で、広く関東に栽培される練馬大根、横浜付近の寺尾大根、埼玉県の理想大根(沢庵漬に理想的な形と言うこと)一名西町大根、愛知県の方領大根・堀江大根、三重県の御園大根、京都付近の鳴滝大根・桃山大根、秋田の秋田大根、福島県の赤筋大根などがある。特殊な形状のものでは、京都府愛宕郡聖護院の産で、千枚漬などに利用する円形の聖護院大根、それに似てやや小形の鞍馬口大根、直径二センチほどの細長で長さ一メートル前後に達し、粕漬にして守口漬として知られる岐阜市の南部で産する守口大根、径十センチ、丈二十五センチほどで、尖端が鼠の尾のように細長く、辛味が強烈な滋賀県坂田郡上野村の鼠大根一名伊吹大根、東京付近に産する徳利状の徳利大根、広島県産で紡錘(つむ)形のうぐろ大根、丸くて鼠の尾のように尖端細長い京都鷹ヶ峯の辛味大根などがある。日本の大根はもともと沢庵漬に適する品種が多く作られ、各家庭で四斗樽に自家用として大量に漬けこんで来たが、近ごろはそれほどでなくなった。